2015年12月20日

診療費の話(1)

気がつけば1年間もご無沙汰していました。すいません。
正しいことをきちんとを書かないと、と考えるとなかなか筆が進まず・・・
これからはもっと気軽に書いていきたいと思います。


言い訳はそれくらいにして本題に。

「ひゃー(診療費)たっかいなー、先生、負けてえな」

とたまに言われます。言われなくても、皆さん心のなかで思っておられるのでは?
私も負けたいのはやまやまなんです(本当)。でも、診療費のディスカウントは原則としてできません(例外については後述します)。ごめんなさい。

理由はいくつかあります。

1,動物病院の特殊性

 人間の病院と比べて、動物病院は小型犬から大型犬、猫、うさぎ、その他あらゆる動物を診療します(うちでは犬と猫ですが)。しかも、内科・外科・眼科・泌尿器科から産科まで全科診療。これは何を意味するかというと、色々な動物の、色々な病気の対する、色々な検査機器や治療機器や薬をそろえておかなければいけないということです。

 もっと平たく言えば、「経費と設備投資に大変お金がかかる」のです。珍しい病気に対する高価な薬を取り寄せ、そのうち1割使って9割は期限が切れて破棄。そんな事珍しくありません。年に2回しか使わない検査機器でも、命にかかわる大切な物なら置かないわけにはいきません。

 最近、はあまりに特殊な診療や治療は、より高度検査治療ができる「二次病院」へ紹介することも増えました。CTとかMRIとかですね。

 それでも、揃えておかなければいけない薬や器具は減りません。そういう「目に見えない経費」が結構掛かるのが動物病院なのです。その費用はどう捻出するか。ポケットマネーで出していたら当然生活できませんので、日頃の診療で薄く広くいただくことになります。

2,「技術料」は目に見えない

 喩え話をします。海釣りに行ってタイを釣ってきました。自分ではさばけないので、いつも行く料理屋さんに持って行き、「これ、料理してえな」と大将にお願いします。お店でさばいてもらい、家へ持って帰ります。その時、「ありがとう」の一言で済ます人はいませんよね。いくら常連でも、「さばき代(?)」が発生するのは当たり前ですよね。

 そう、大将がタイをさばくのは「技術」であり、その技術は大将が長年の努力と経験を積んで磨いてきたものです。対価を支払うのは当然ですよね。

 「たかが犬猫の手術に10万、20万も掛かるなんておかしい」という人は、我々獣医師も、その「技術」を磨くために日々研鑽努力していることを理解していただきたいと思います。


3,検査や治療に「松竹梅」はない

 「先生、避妊手術代まけてえな」。残念ですが、避妊・去勢手術はすでにディスカウントしています。これは動物の不妊化・中性化は社会にとっても重要なことだからです。捨て犬、野良猫を減らすのは獣医師の社会的責任だと思いますので、その手術は「採算度外視(とまで書くと言いすぎですが)」で安くしているのです。

 避妊・去勢手術は少し特殊な例ですが、他の治療や検査については、いわゆる「ゴールデンスタンダード」というものが存在します。すなわち「一番安く、一番早く、一番動物たちに負担をかけないように直す」方法です。つまり「一番良い方法」を我々はいつも必死に模索しています。

 もちろんそれは理想論ですから、病気がわからないうちは回り道をしたり、結果的に必要ない検査をすることもあります。でもそれは考えた末での結果論なのでどうかお許し下さい。生き物の体って、教科書通りにはなかなかいかないんです・・・・

4,ほんとにその検査や薬、必要なの?必要なんです。

 自動車の修理なら、仮に間違ってエンジンを潰しても傷をつけても、修理したり部品を取り替えたり、最悪でも代わりにモノやお金でなんとかなります。つまり極論を言えば「治らない故障」はありません。

 しかし、 我々が日頃向き合っているのは「物言わぬ生き物」の「得体のしれない病気やけが」です。その生命に代わりはありません。失敗は取り返しがつきません。そして「治らない病気やけが」は間違いなく存在します。

 よって、我々獣医師は、目の前の動物の治療に「ベスト」を求めます。「ベター」でいい、という考え方は「取り返しがつかなくなる可能性が上がる」、つまり「死ぬかもしれない」と考えるからです。

 血液検査項目を1つ省略しただけで病気を見逃したり、超音波検査を省いただけで治る病気が治らなかったり、薬を1種類減らしただけで他の薬の意味がなくなってしまったりするのが「物言わぬ生き物」の「得体のしれない病気やけが」なのです。

 誓っていいですが、お金儲けのために必要のない検査をしたり必要のない薬を処方する獣医師はほとんどいません(本当は1人もいない、と言いたいところですが)。なぜなら、獣医師が一番嬉しいのは「お金が儲かった」時ではなくて「病気や怪我がなおって動物たちが元気になってくれた」時だからです。

5,ネットの普及

 これがなぜ診療費に関係するのか、それはまた次回。
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2014年12月15日

腎臓の話(その2)

前回は腎臓病の原因についてお話しました。今回は「腎臓病がなぜ恐ろしいか」と「じゃあ、何に気をつけたらいいの?」という点をお話します。

「腎臓病がなぜ恐ろしいか」

 悪化したら元に戻らない(完全に治らない)ということもありますが、最も恐ろしいのは

腎臓病の初期はほとんどわからない(症状が出ない)、症状が出た時はすでに病気がだいぶ進行している

という点にあります。これは、腎臓が余力のある臓器であり、全体の75%に障害を受けないと症状として出てこないからです。つまり、おかしいと思った時点で手遅れに近いという事もありうるわけです。

 ではどうしたらいいか。軽いあるいは初期の症状(後述)が出た時に検査をすれば引っかかってくるかもしれません。

 一般的には血液検査と尿検査ですが、尿検査だけでも蛋白尿が出ているかどうかを指標に初期の兆候を捉えることができます。尿検査は来院していただかなくても、おしっこだけ持ってきて頂ければ可能ですので、心配な方はぜひ一度尿検査だけでもしてあげて下さい(病院へ来てくだされば専用の容器をお渡しします)。


「じゃあ何に気をつけたらいいの?」


前回も書きましたが、腎臓病には徴候・特徴があります。箇条書きにすると、

1,老犬・老猫である
2,最近痩せてきた
3,水をよく飲む。おしっこをたくさんする
4,食事に時間が掛るようになってきた。口の中が痛そう、口臭がする(犬)
5,急に目が見えなくなったような気がする(猫)
6,顔がむくんでいる(犬)

1について。加齢によって腎臓病になる危険性が増すということです。
2について。尿毒症の症状です。
3について。腎臓病の初期の症状です。
4について。尿毒症物質の1つ、アンモニアによる口内炎や舌の潰瘍ができているのかもしれません。
5について。腎臓病による高血圧で網膜剥離が起こった可能性があります
6について。まれですが、腎臓病によって甲状腺機能亢進症を引き起こすことがあります。顔がむくむのはその症状です。

以上のような兆候がもし見つかれば、一度腎臓の検査をしてあげて下さい。まずはおしっこの検査だけでもけっこうです。
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2014年12月12日

腎臓の話(その1)


犬や猫はおおよそ10歳ごろから老齢期を迎えます。つまり老犬、老猫となります。

 そんな老犬、老猫をお飼いの飼い主さんに質問です。最近食欲が落ちたり、すこし痩せてきたと感じておられませんか?さらに、最近お水を昔よりたくさん飲むような事はないですか?

 それは年齢のせいではなく、ひょっとしたら腎臓病(腎障害・腎不全)かもしれません。

 腎臓は体の老廃物である「おしっこ」を作る器官ですが、おしっこが腎臓内で作られる過程は非常にデリケートで、ちょっとしたきっかけで腎臓は障害を受けてしまいます。そしてその構造上、障害が障害を生み出すという悪循環に陥りやすいのです。さらに恐ろしいのは、

腎臓は一度壊れてしまうと治らない。

という点にあります。これは動物も人間も同じで、人間でも腎臓がやられてしまうと腎移植や透析という大掛かりな治療が必要になってしまうのはそのためです。


 さて、一口に腎臓病と言っても病態や原因は色々あります。今日は原因について。

 まずは食事です。タンパク質のあまりに多い食事は腎臓に負担をかけるので腎臓病の原因となりえます。ジャーキー(ササミジャーキー含む)などのおやつ、肉類ばかり好んで食べる子は要注意です。

 あと、「カリウム」というミネラル分が少ない食事を摂り続けても腎臓に深刻なダメージが出ることがわかっています。間違えないで頂きたいのは一般的に塩(しお)と呼ばれるものは「塩化ナトリウム」であり、「ナトリウム」と「カリウム」は全然別物です。(ちなみに、意外なことに健康な動物が多少ナトリウムの多い食事をとっても腎臓が悪くなることはありません。あくまで悪いのは「カリウムが少ないこと」です)。

 次に、先天的なものを除いてよく見られるのは尿結石などによる閉塞ホルモン(甲状腺)の異常、あと高カルシウム血症を引き起こすある種の腫瘍などがあります。

 犬に特有の原因としては、レプトスピラなどの感染症やある種の薬物・薬品、それからあまり知られていないものとしてぶどう(レーズン)中毒があります。生のぶどう、干しぶどうは犬に絶対にあたえないで下さい!量にもよりますが、腎不全から死に至ることがあります。

 猫の場合、日常使う薬(鎮痛剤、抗生剤)が腎障害の引き金になることもあります。さらに猫免疫不全ウイルス感染症(いわゆる「猫エイズ」)が原因になったりもします。あと覚えておいていただきたいのは、植物にも危険なものがあるということです。ある種のバラ、それからユリなどを誤って食べてしまうと腎障害が出ることがあります。

 しかし、犬も猫も、実は多くの場合原因が不明というケースが最も多いのです。だから逆に恐ろしいと言えます。
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2014年12月01日

「様子を見る」ということ

飼っている動物の調子が悪い時、ほとんどの人が最初にすること、それは「様子を見る」事ですね。「ネットで調べる」がその次でしょうか(笑)。

もちろん、いつもとちょっとでも様子が違うとすぐに病院へ連れてきてくださる方もおられますし、それは実はまったく正しいのです。本音をいうと「様子を見ていいかどうか」はよほど観察眼が鋭いか、あるいは実際に診察しないと判断が難しいものなのです。

 それに、動物たちは病気を隠します(特に猫)。ですから、調子が悪い事を飼い主さんに見せる時というのは実は結構病気が進行していたり、重大な状態にまで進んでしまっている事もある、ということは頭に入れておいて下さいね。


 さて、そういう事をいちおう前提にして、「様子をみる」について考えたいと思います。まず前提条件として、

・子犬・子猫(おおむね生後半年未満)
・老犬、老猫(おおむね12歳以上)
・持病がある動物(特に心臓・呼吸器・ホルモン系)


の場合は「様子を見る」のは絶対ダメ!です。半日、あるいは数時間で取り返しのつかない事になってしまう可能性があります。夜中でも夜間救急病院に走っていただいたほうが良い場合もあります。

あと、もちろん、普段とぜんぜん違う行動、例えば

・体を痒がって散歩も行けない
・足を完全に挙げ、3本足で歩いている
・ウロウロと落ち着きが無い
・普段と違う声を出す
・夜中一睡もしない
・体を触ると「キャン」と叫ぶ
・呼吸器の症状(息が荒い、咳をしている、呼吸がしにくそう)
・体全体の症状(ぐったりしている、舌の色が真っ白、体温が下がっているようだ)


などは重大な病気の兆候かもしれませんので、若くても持病がなくてもすぐ来院していただいたほうがいいです。


 次に、まあまあ若くてまあまあ健康で、特に持病もない動物で、連れて行くべきか迷う症状の場合。ポイントは「様子を見て取り返しのつかないことになるかどうか」です。もっとはっきり書けば「半日〜1日ぐらい様子を見ているうちに手遅れになる可能性がある病気かどうか」ということですね。そういう意味から、

症状が1つだけの場合、半日〜1日様子を見てもいい

と考えて下さい。例えば、

・1度もどした(嘔吐)けど、元気で食欲もある。
・下痢しているけど元気だ
・元気だけど食欲が少しない

などは症状が1つだけなので半日〜1日様子を見てもいいと思います。ただし、あくまで半日〜1日です。3日も4日も続いて嘔吐がでているのに「様子を見て」いてはいけません!そういうのは「見て見ぬふりをしている」といいます。

次にこれを応用して考えると、

・もどした(嘔吐)あと、下痢もしている(でも元気)
・下痢していて朝より元気がなくなってきた
・食欲が無い、さらに元気もあまりない

という場合、症状が2つになっているわけですからこういう場合は病院へGo!です。いずれにせよ、迷ったら連れて来ていただいたほうが無難です。

 現在当院ではワンコインで往診しております。また、土曜日、日曜日も診察しております(原則午前中)ので、お気軽にご来院下さい。


 お断り:今回の内容はあくまで一般論であり、単一の症状の動物が全て軽症であり、様子を見ても大丈夫、という意味ではありません。判断はあくまでご自身で、迷ったら必ず連れて来てください。


 最後にお願い。病院へ行くべきかどうかを電話でお聞きになる飼い主さんが多いです。「●●なんですが、大丈夫ですか?」「今●●したんですが、どうすればいいですか?」という感じです。

 その答えは申し訳ありませんがいつも同じです。「お話だけでは何とも言えません」。まあたぶんほとんど大丈夫だろうな、と思う症状や相談でも、お電話での相談では基本的には「大丈夫です」とは絶対に言いません(言えません)。

 だって、ほんとにわからないんですもん。「どうしよう」と迷ったら病院へ。
posted by hiro at 17:45| Comment(0) | 健康

2014年11月08日

跛行(歩き方がおかしい)診断は難しい

動物の体は基本的に左右対称ですね。その左右にまつわるお話の第一回目。今回は跛行(はこう)について。跛行とは医学用語で、歩き方がおかしい、いわゆる「びっこ」のことをいいます。

「先生、この子今朝から歩きかたがおかしいんです」

という主訴(症状)で来院する犬は意外と多いです。

 余談になりますが、猫で跛行が少ないのは、もともと運動能力が高く怪我などをしにくい事、犬に比べ体重が軽いので重症化しにくいこと、膝や肘を曲げて歩けるので跛行してもわかりにくい事、散歩をしないので脚の異常に気づきにくいこと、そして犬に比べて痛みや異常を隠す傾向が強いこと等があげられます。


 で、その跛行ですが、前足と後ろ足の異常を間違えることはありませんよね。でも、実は右と左の異常はなかなか分かりにくいんです。もちろん完全に足を挙げて地面に付かないぐらいの異常は別ですが、軽い症状の場合、飼い主さんが右と言っても実は左が悪かった、ということもたまにあります。

 ちょっと書きにくいんですが、実は私もパッと見ただけでわからない場合があります。もちろん触ったり動かしたりして調べればほとんど分かるのですが、ごくわずかな異常の場合や両方に異常がある場合(老年性の変形性関節症など)、それでも迷うことが多いです。

 そこで活躍するのが、いわゆるスローモーションが撮れるハイスピードカメラ。普通の動画は1秒間に30コマ(30fps)ですが、私が持っているカシオのデジカメは210fpsで撮影できます。それで見ると、ごくわずかな異常もわかりやすくなります。

 ですから、もし「歩き方がおかしい」という主訴で病院へ来られた時、私がカメラを持ちだしたら「ああ、微妙な症状なんだな」と温かい目で見て下さいね(笑)
posted by hiro at 11:39| Comment(0) | 健康