2011年12月27日

獣医さんの1年・その4

だらだらと続いてしまった獣医さんの1年もいよいよ最終回です。といっても、感動のラストもどんでん返しもありませんが。

秋の気配が漂いだすと、病院もだいぶ落ち着いてきます。しかし春と同じく朝晩の寒暖の差が激しくなってくるので、そのせいで体調を崩す子たちは少なくありません。

動物は人に比べて老化のスピードが速いため、「去年大丈夫だったから」といってまったく油断できません。老化は急速に起こります。

あと、この時期はキク科のブタクサ・ヨモギ・セイタカアワダチソウなどの花粉がたくさん飛ぶ時期でもあります。人間と違い、花粉症は鼻に出るとは限らず、外耳炎、脇の下や後ろ足の付け根、腹部、足先や指の間の皮膚炎として出ることが多いので、そういう部分を痒がったり一生懸命舐めたりするようになったら要注意!です。

冬。獣医さんが一番ヒマになる季節です。しつけや病気のことをじっくり聞きたい場合、この時期なら多くの獣医さんが時間を割けると思います。


なお余談ですが、忙しい時期、それも診察時間中に緊急でない相談のお電話を頂くと、外来の患者さんを長時間お待たせしてしまうことになります。当院のような獣医師一人の病院だとなおさらです。

ですから、お気軽にお電話して下さるのは嬉しいのですが、話が長くなりそうな時はどうか一言「時間は大丈夫ですか?」と聞いてください。お願いいたします。あ、もちろん緊急を要する要件なら別です。


冬に増えてくるのはにゃんこのおしっこの病気と鼻風邪です。おしっこの病気はバイキンや結石(結晶)による膀胱炎や尿閉(おしっこが出なくなる状態)が多く、特に尿閉(ほぼオス猫のみ)は1日以上ほうっておくと命に関わりますので、「何度もトイレに行くがおしっこがほとんど出ていない」「トイレの時間が異様に長い」「ニャーニャー苦しそうに鳴いて落ち着かない」「まったく食欲がなくなった」などの症状が出た時はとにかく直ぐに病院へ連れてきてください。夜中の場合でも、夜間病院へ走って頂いたほうがよいと思います。朝まで待っている間に、手遅れになる可能性もあります。

猫の鼻風邪は、カリシウイルス感染症・ヘルペスウイルス感染症・クラミジア感染症・ボルデテラ感染症など多くの種類がありますが、11月頃から春までの寒い時期に増えてくるのがヘルペスウイルスが原因による猫風邪です。

ヘルペスの場合、くしゃみ・鼻水といった鼻の症状、目やに・結膜炎といった目の症状に加え、全身の倦怠感やヨダレが出ることが大きな特徴です。ウイルスによる病気なので特効薬はありませんが、抗生物質や目薬でバイキンの二次感染を抑えてあげると症状も和らぎますので、ぜひ早めにご相談ください。


というわけで、無事1年も終わろうとしています。お正月はテーブルの上に置かれたおせち料理を盗食・誤食してしまうケースがありますので、どうかお気をつけ下さい。あと、いくら酔っぱらっても犬や猫にお餅を与えないでくださいね!

それでは皆様、少し早いですが良いお年を!

posted by hiro at 11:49| Comment(0) | 診療

2011年12月25日

獣医さんの1年・その3

「獣医さんの1年」は思わぬ大作になってきました(というより、趣旨が微妙に変わってきている・・・)が、もう少しお付き合いをお願いします。

春で書き忘れたことが1つ。この時期は「木の芽時」と言われますが、人間では不定愁訴や自律神経失調症が起こりやすい時期です。猫は発情期(の終盤)ですし、犬も身体的・精神的に変調を来しやすいことが知られています。

特に、てんかんの発作を持っている子や、心臓が悪い子などは要注意です。いつも以上に気をつけてみてあげてください。


さて、狂犬病とフィラリアとノミ予防の春が一段落すると、梅雨に入ります。梅雨の時期のように、朝晩や短期間で気温が乱高下する時期は、やはり体調を壊しやすくなります。特に年をとった子たちは注意してあげてください。

また、梅雨で湿度が上がると、家の中にはカビの胞子がたくさん飛ぶようになります。そしてそれらの胞子は、アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)として非常にポピュラーであるという事がわかっています。

つまりこの時期になると耳や体を痒がる子の場合、カビアレルギー性皮膚炎の可能性が高いと言えます。特に柴犬・リトリバー・テリア(特にウエスティ)・シーズー・ビーグル・シュナウザーなどの犬種はアレルギー性皮膚炎の好発品種ですので、お気をつけ下さい。


梅雨も過ぎ、暑い夏がやって来ました。7月も後半になると病院もやや落ち着きを取り戻しますが、この時期に増えてくるのは下痢・嘔吐・食欲不振などの胃腸病です。猫は暑さに比較的強いですが、犬は暑いのが苦手です。

特に高温多湿の日本は、外国原産の犬(特に寒い地方が原産の犬)や短頭種(シーズーやパグなど、鼻ペチャの品種)にとっては過酷な環境になります。間違っても直射日光の当る家の南側に繋ぎっぱなしにしたり、クーラーを切って閉めきった部屋に放置したりすることのないよう気をつけてあげてください。

もう少し続きます。

posted by hiro at 12:26| Comment(0) | 診療

2011年12月21日

獣医さんの1年・その2

前回の続きです。

というわけで狂犬病を接種するのですが、病院以外でも「集合注射」という形で接種しているのはご存知ですよね。

大阪府では、獣医師会に加入している獣医師が当番制で接種する形になります。交野市では春の第1〜第2週から始まり、約7−8日間、いろいろな場所を回って接種します。

私も去年(やっと?)大阪府獣医師会に加入したので、今年からは集合注射に行く予定です。会場で見かけたら声をかけてくださいね。


さて、春といえば忘れてはいけないのがフィラリアですね。もうご存知かと思いますが、蚊を通じて感染し、心臓(正確には心臓から出ている肺動脈)にそうめん状の虫が寄生する、恐ろしい病気です。

月一回の予防薬が出て20年、この普及でフィラリア感染は激減しました。私が開業した17年前は年に何十頭もこの病気で亡くなっていたのですが、今や感染している犬も数えるほどです。

しかし!だからといって完全に撲滅できたわけではありません。予防しないと高い確率で感染することには変わりありませんし、感染すると間違いなく寿命が縮まるか急死してしまう恐ろしい病気ですので、室内犬であっても必ず予防させてあげてくださいね。


そうそう、ノミダニ予防薬も忘れずに!(まとめ買いで割安になります)


また長くなってしまいました。それだけ春は忙しいということなんですね(笑)。続きはまた次回。

posted by hiro at 09:42| Comment(0) | 診療