2012年01月29日

寿命?

毎日寒いですね。巷ではインフルエンザが大流行とのこと。
皆様もどうかお気をつけ下さい。


今でこそ気軽に来てくださるようになりましたが、私が開業した頃はまだ「動物病院は贅沢品(?)」と思われている方も多く(というより「ボッタクリだ」と思われていたかもしれませんが・・・)、飼い犬や飼い猫が多少調子が悪くなっても大黒柱のお父さんが「んなもん、放っといたら治る!」と、ギリギリまで様子を見られ、病院へ来る頃にはもう息も絶え絶え・・というケースが跡を絶ちませんでした。

最近のように動物たちを家族同然に可愛がっている方からすれば信じられないかもしれませんが、昔は「もうダメかもしれないな、じゃあ病院へ連れて行くか」と考える人も多かったのです。え、そんな状態で動物病院へ連れて行くっても仕方ないのではって?違うのです。

そこで「助からない」という事を確認して、心に区切りをつける(諦めるため)に動物病院を訪れるのです。ですから「ああ、これはもう寿命ですね」とか「もう手遅れですね・・・」とか「せめてあと5日早く連れてきてくれたら手の施しようもあったのに・・・」と言ってくれる獣医さん(しかも、一目見て断定するような)がその時代の名医でした(えっと、この話はあくまで一般論です)。

逆に、そういう人に「だいぶ重症のようですから、検査しましょう」とか、「◯◯という病気が疑われますので、治療(手術)をすれば助かる可能性があります」と言うと、怪訝な顔をしたり困った顔をしたりして、もじもじながら「あの、先生、もうこの子の寿命なんで(検査も治療も)いいです」と返されてしまいます(そういう方はだいぶ減りましたが)。

で、その心の底には、多くの場合金銭的な問題が絡んでいます。それは悲しい事だけど私がどうこういえる問題ではありません(はっきりおっしゃってくださる方には、色々な問題解決方法を提示することは可能です)。

でも、本気で「この子はもう寿命だ。私がそう思ったんだから間違いない。あと数日で死ぬんだ!」と決めている方がまれに居て、そういう人はこちらが説明すればするほど頑なになってしまわれます。一番の悲劇は、ご家族の多くが検査や治療を望んでおられるのに、家長さんであるお父さんやお爺ちゃんが首を縦に振ってくれない場合。診察室は死にそうな動物を前にお通夜状態になります。


というわけで、つまり何が言いたいかというと、

「私は名医ではないので、一目診ただけでその子が寿命なのかどうかわかりません。だから、本当に寿命なのかどうか、もし病気であれば治る見込みがあるのかどうかを調べるため、せめて検査だけでもさせてください。そしてその結果を見て、どうするか決めてあげてください」

と言うことなのです。
posted by hiro at 12:01| Comment(4) | 診療

2012年01月25日

歳をとって初めて分かること

今日は自分自身のことについて。

開業した頃は髪の毛もまだ多く体重も50kg台をキープし、「若者」であった私ですが、去年4度目の歳男を迎え50歳まであと一歩、頭は寂しくおなか周りは充実と「押しも押されぬ中年おやぢ」になってしまいました。しかし、この歳になって初めて判ってきたことがいくつかあります。

例えば。自身の老眼が進んできてやっと「小さな字で書かれているものがいかに不親切か」という事に初めて気づきます(このブログはどうでしょうか?小さすぎますか?もしそうなら、キーボード左下辺りにある「ctrl」キーを押しながら「+」キーを何度か押してみてください。「+」キーはデスクトップならテンキーの右側に、ノートならenterキーの3つぐらい左にあると思います。なお、元に戻す時は「ctrl」キーを押しながら「-」キーです)。

老眼は本当にイライラします。そこに見えているものがちょっと暗かったり字が小さいだけでまったく理解できないのですから。しかしその不便さは、実際になったものでないと分からないですよね。

そして、ふと気づくのです。「いままで、強者の立場からしか物事を見ていなかったんじゃないか?」と。お年寄りや体の不自由な人、妊婦やけが人など、いわゆる「弱者」と呼ばれる人が世に中にはたくさんいます。そういう人に対して、果たして自分はその人の立場に立った対応ができていたのだろうか?鼻持ちならないぐらい上から目線で接していたことがあるんじゃないか?と。

特に獣医師は「先生」と呼ばれる職業です。いやらしい話ですが「ありがとうと言われ、なおかつお金をいただける」仕事の1つです。だから「自分は偉いんだ」と無意識に思ってしまいがちです。

でも、そこはいつも自戒しなければいけません。決して自分は偉いわけではないし、いつも正しい訳ではない。飼い主さんの立場に立って考える。バランス感覚と云うか、自然体と云うか、そういう感じで居なければいけません。本来なら当たり前のことなんですけどね。

今日はちょっと偽善的な日記になってしまいましたが、私自身へ言い聞かせている回だと思ってご理解ください。あと、もし、私が病院で偉そうにしていたら遠慮無く叱り飛ばしてください(笑)。

posted by hiro at 12:32| Comment(0) | 日記

2012年01月22日

動物病院と電話

というわけで続きです。

前回、「(何か異常があって)すぐ連れてこれないなら、電話相談だけでもかまいません」と書きましたが、電話の件でお願いしたいことがいくつかあります。


まずは時間。病院にお電話いただくのは原則的に診察時間内になります(それ以外の時間は申し分けありませんが留守番電話の対応になります)。ですから、診察中で院長の手が離せない可能性があるということをまずご理解ください。その場合、こちらから改めてお電話させて頂きます。


次にお電話で受ける質問についてですが、基本的に電話だけで病気かどうか・重症かどうかを判断することはできません。実際に目で見てみないことには、診断が下せないのです。

よくあるご質問が、「〜なのですが大丈夫でしょうか?」「〜してるのですが連れていったほうがいいですか?」というものです。お気持は大変よく分かりますし、心のなかで「大丈夫ですよ」「そのままお家で様子を見ていただいて結構ですよ」と言って欲しいという本音が伝わってくる場合も多いのですが、残念ながら、電話で様子を聞いただけですべてわかってしまうほどの名医でも超能力者でもありません(笑)

冗談はさておき、この話を別の職業に置き換えてみてください。カーディーラーに「最近走っているとガタガタ音がするようになったんですが、故障ですか?」と聞いたら、きっと「それだけでは分かりませんので、一度見せて下さい」と言うと思います。自動車に例えるのが不謹慎なら、小児科のお医者さんに「うちの子が泣き止みません。どうしてですか?」と電話で聞いたと考えてみてください。「それだけでは判断しかねますので、できればご来院ください(それだけで判るか!連れてこい!!)」と答える(括弧内は心の声)と思います。


ここまで読んで、『あれ、「お気軽に電話相談してください」って書いてたのに「電話では分からない」って、どういうこと?』と思われた方は大変聡明な方です(笑)。そうなのです。一見矛盾するんですよね。実は私が本当に言いたいことは、「電話だけでは体の不調のことはわかりませんので、電話相談を足がかりにぜひご来院いただけますか?」ということなのです。

もちろん、しつけの問題や食事の悩みなど、電話でお答えできることに関してはご相談を承ります。


あと、診察時間内の電話で世間話をされたり、まったく関係のないことを機関銃のようにお喋りになられる方がたまにいらっしゃいます。親しみの表現として大変嬉しいのですが、看護師さんがカルテを持って、私の背中を睨んでいる(外来で何名も人が待っている)場合もありますので、病気に関係ないお喋りはどうかご遠慮ください。


ただ、こういう話を読んで「そうか、気を付けないといけないな」と思ってくださる方は、そもそもそういう事(電話での無理難題や診察中の長電話)をされたり仰ったりしない方で、逆に「そんな非常識な人がいるんだ。ふーん」と読み流してしまう人こそ無意識にそういう行動をされているというのがよくあるパターンなんですよね。


今回はちょっとだけ本音が出てしまいました。よりよい診療のため、外来の患者さんをお待たせしないためのお願いですので、どうかご理解くださいますようお願いいたします。

posted by hiro at 11:02| Comment(0) | 診療