前回は腎臓病の原因についてお話しました。今回は「腎臓病がなぜ恐ろしいか」と「じゃあ、何に気をつけたらいいの?」という点をお話します。
「腎臓病がなぜ恐ろしいか」
悪化したら元に戻らない(完全に治らない)ということもありますが、最も恐ろしいのは
腎臓病の初期はほとんどわからない(症状が出ない)、症状が出た時はすでに病気がだいぶ進行している
という点にあります。これは、腎臓が余力のある臓器であり、全体の75%に障害を受けないと症状として出てこないからです。つまり、おかしいと思った時点で手遅れに近いという事もありうるわけです。
ではどうしたらいいか。軽いあるいは初期の症状(後述)が出た時に検査をすれば引っかかってくるかもしれません。
一般的には血液検査と尿検査ですが、尿検査だけでも蛋白尿が出ているかどうかを指標に初期の兆候を捉えることができます。尿検査は来院していただかなくても、おしっこだけ持ってきて頂ければ可能ですので、心配な方はぜひ一度尿検査だけでもしてあげて下さい(病院へ来てくだされば専用の容器をお渡しします)。
「じゃあ何に気をつけたらいいの?」
前回も書きましたが、腎臓病には徴候・特徴があります。箇条書きにすると、
1,老犬・老猫である
2,最近痩せてきた
3,水をよく飲む。おしっこをたくさんする
4,食事に時間が掛るようになってきた。口の中が痛そう、口臭がする(犬)
5,急に目が見えなくなったような気がする(猫)
6,顔がむくんでいる(犬)
1について。加齢によって腎臓病になる危険性が増すということです。
2について。尿毒症の症状です。
3について。腎臓病の初期の症状です。
4について。尿毒症物質の1つ、アンモニアによる口内炎や舌の潰瘍ができているのかもしれません。
5について。腎臓病による高血圧で網膜剥離が起こった可能性があります
6について。まれですが、腎臓病によって甲状腺機能亢進症を引き起こすことがあります。顔がむくむのはその症状です。
以上のような兆候がもし見つかれば、一度腎臓の検査をしてあげて下さい。まずはおしっこの検査だけでもけっこうです。
2014年12月15日
腎臓の話(その2)
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2014年12月12日
腎臓の話(その1)
犬や猫はおおよそ10歳ごろから老齢期を迎えます。つまり老犬、老猫となります。
そんな老犬、老猫をお飼いの飼い主さんに質問です。最近食欲が落ちたり、すこし痩せてきたと感じておられませんか?さらに、最近お水を昔よりたくさん飲むような事はないですか?
それは年齢のせいではなく、ひょっとしたら腎臓病(腎障害・腎不全)かもしれません。
腎臓は体の老廃物である「おしっこ」を作る器官ですが、おしっこが腎臓内で作られる過程は非常にデリケートで、ちょっとしたきっかけで腎臓は障害を受けてしまいます。そしてその構造上、障害が障害を生み出すという悪循環に陥りやすいのです。さらに恐ろしいのは、
腎臓は一度壊れてしまうと治らない。
という点にあります。これは動物も人間も同じで、人間でも腎臓がやられてしまうと腎移植や透析という大掛かりな治療が必要になってしまうのはそのためです。
さて、一口に腎臓病と言っても病態や原因は色々あります。今日は原因について。
まずは食事です。タンパク質のあまりに多い食事は腎臓に負担をかけるので腎臓病の原因となりえます。ジャーキー(ササミジャーキー含む)などのおやつ、肉類ばかり好んで食べる子は要注意です。
あと、「カリウム」というミネラル分が少ない食事を摂り続けても腎臓に深刻なダメージが出ることがわかっています。間違えないで頂きたいのは一般的に塩(しお)と呼ばれるものは「塩化ナトリウム」であり、「ナトリウム」と「カリウム」は全然別物です。(ちなみに、意外なことに健康な動物が多少ナトリウムの多い食事をとっても腎臓が悪くなることはありません。あくまで悪いのは「カリウムが少ないこと」です)。
次に、先天的なものを除いてよく見られるのは尿結石などによる閉塞、ホルモン(甲状腺)の異常、あと高カルシウム血症を引き起こすある種の腫瘍などがあります。
犬に特有の原因としては、レプトスピラなどの感染症やある種の薬物・薬品、それからあまり知られていないものとしてぶどう(レーズン)中毒があります。生のぶどう、干しぶどうは犬に絶対にあたえないで下さい!量にもよりますが、腎不全から死に至ることがあります。
猫の場合、日常使う薬(鎮痛剤、抗生剤)が腎障害の引き金になることもあります。さらに猫免疫不全ウイルス感染症(いわゆる「猫エイズ」)が原因になったりもします。あと覚えておいていただきたいのは、植物にも危険なものがあるということです。ある種のバラ、それからユリなどを誤って食べてしまうと腎障害が出ることがあります。
しかし、犬も猫も、実は多くの場合原因が不明というケースが最も多いのです。だから逆に恐ろしいと言えます。
posted by hiro at 17:20| Comment(0)
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2014年12月01日
「様子を見る」ということ
飼っている動物の調子が悪い時、ほとんどの人が最初にすること、それは「様子を見る」事ですね。「ネットで調べる」がその次でしょうか(笑)。
もちろん、いつもとちょっとでも様子が違うとすぐに病院へ連れてきてくださる方もおられますし、それは実はまったく正しいのです。本音をいうと「様子を見ていいかどうか」はよほど観察眼が鋭いか、あるいは実際に診察しないと判断が難しいものなのです。
それに、動物たちは病気を隠します(特に猫)。ですから、調子が悪い事を飼い主さんに見せる時というのは実は結構病気が進行していたり、重大な状態にまで進んでしまっている事もある、ということは頭に入れておいて下さいね。
さて、そういう事をいちおう前提にして、「様子をみる」について考えたいと思います。まず前提条件として、
・子犬・子猫(おおむね生後半年未満)
・老犬、老猫(おおむね12歳以上)
・持病がある動物(特に心臓・呼吸器・ホルモン系)
の場合は「様子を見る」のは絶対ダメ!です。半日、あるいは数時間で取り返しのつかない事になってしまう可能性があります。夜中でも夜間救急病院に走っていただいたほうが良い場合もあります。
あと、もちろん、普段とぜんぜん違う行動、例えば
・体を痒がって散歩も行けない
・足を完全に挙げ、3本足で歩いている
・ウロウロと落ち着きが無い
・普段と違う声を出す
・夜中一睡もしない
・体を触ると「キャン」と叫ぶ
・呼吸器の症状(息が荒い、咳をしている、呼吸がしにくそう)
・体全体の症状(ぐったりしている、舌の色が真っ白、体温が下がっているようだ)
などは重大な病気の兆候かもしれませんので、若くても持病がなくてもすぐ来院していただいたほうがいいです。
次に、まあまあ若くてまあまあ健康で、特に持病もない動物で、連れて行くべきか迷う症状の場合。ポイントは「様子を見て取り返しのつかないことになるかどうか」です。もっとはっきり書けば「半日〜1日ぐらい様子を見ているうちに手遅れになる可能性がある病気かどうか」ということですね。そういう意味から、
症状が1つだけの場合、半日〜1日様子を見てもいい
と考えて下さい。例えば、
・1度もどした(嘔吐)けど、元気で食欲もある。
・下痢しているけど元気だ
・元気だけど食欲が少しない
などは症状が1つだけなので半日〜1日様子を見てもいいと思います。ただし、あくまで半日〜1日です。3日も4日も続いて嘔吐がでているのに「様子を見て」いてはいけません!そういうのは「見て見ぬふりをしている」といいます。
次にこれを応用して考えると、
・もどした(嘔吐)あと、下痢もしている(でも元気)
・下痢していて朝より元気がなくなってきた
・食欲が無い、さらに元気もあまりない
という場合、症状が2つになっているわけですからこういう場合は病院へGo!です。いずれにせよ、迷ったら連れて来ていただいたほうが無難です。
現在当院ではワンコインで往診しております。また、土曜日、日曜日も診察しております(原則午前中)ので、お気軽にご来院下さい。
お断り:今回の内容はあくまで一般論であり、単一の症状の動物が全て軽症であり、様子を見ても大丈夫、という意味ではありません。判断はあくまでご自身で、迷ったら必ず連れて来てください。
最後にお願い。病院へ行くべきかどうかを電話でお聞きになる飼い主さんが多いです。「●●なんですが、大丈夫ですか?」「今●●したんですが、どうすればいいですか?」という感じです。
その答えは申し訳ありませんがいつも同じです。「お話だけでは何とも言えません」。まあたぶんほとんど大丈夫だろうな、と思う症状や相談でも、お電話での相談では基本的には「大丈夫です」とは絶対に言いません(言えません)。
だって、ほんとにわからないんですもん。「どうしよう」と迷ったら病院へ。
もちろん、いつもとちょっとでも様子が違うとすぐに病院へ連れてきてくださる方もおられますし、それは実はまったく正しいのです。本音をいうと「様子を見ていいかどうか」はよほど観察眼が鋭いか、あるいは実際に診察しないと判断が難しいものなのです。
それに、動物たちは病気を隠します(特に猫)。ですから、調子が悪い事を飼い主さんに見せる時というのは実は結構病気が進行していたり、重大な状態にまで進んでしまっている事もある、ということは頭に入れておいて下さいね。
さて、そういう事をいちおう前提にして、「様子をみる」について考えたいと思います。まず前提条件として、
・子犬・子猫(おおむね生後半年未満)
・老犬、老猫(おおむね12歳以上)
・持病がある動物(特に心臓・呼吸器・ホルモン系)
の場合は「様子を見る」のは絶対ダメ!です。半日、あるいは数時間で取り返しのつかない事になってしまう可能性があります。夜中でも夜間救急病院に走っていただいたほうが良い場合もあります。
あと、もちろん、普段とぜんぜん違う行動、例えば
・体を痒がって散歩も行けない
・足を完全に挙げ、3本足で歩いている
・ウロウロと落ち着きが無い
・普段と違う声を出す
・夜中一睡もしない
・体を触ると「キャン」と叫ぶ
・呼吸器の症状(息が荒い、咳をしている、呼吸がしにくそう)
・体全体の症状(ぐったりしている、舌の色が真っ白、体温が下がっているようだ)
などは重大な病気の兆候かもしれませんので、若くても持病がなくてもすぐ来院していただいたほうがいいです。
次に、まあまあ若くてまあまあ健康で、特に持病もない動物で、連れて行くべきか迷う症状の場合。ポイントは「様子を見て取り返しのつかないことになるかどうか」です。もっとはっきり書けば「半日〜1日ぐらい様子を見ているうちに手遅れになる可能性がある病気かどうか」ということですね。そういう意味から、
症状が1つだけの場合、半日〜1日様子を見てもいい
と考えて下さい。例えば、
・1度もどした(嘔吐)けど、元気で食欲もある。
・下痢しているけど元気だ
・元気だけど食欲が少しない
などは症状が1つだけなので半日〜1日様子を見てもいいと思います。ただし、あくまで半日〜1日です。3日も4日も続いて嘔吐がでているのに「様子を見て」いてはいけません!そういうのは「見て見ぬふりをしている」といいます。
次にこれを応用して考えると、
・もどした(嘔吐)あと、下痢もしている(でも元気)
・下痢していて朝より元気がなくなってきた
・食欲が無い、さらに元気もあまりない
という場合、症状が2つになっているわけですからこういう場合は病院へGo!です。いずれにせよ、迷ったら連れて来ていただいたほうが無難です。
現在当院ではワンコインで往診しております。また、土曜日、日曜日も診察しております(原則午前中)ので、お気軽にご来院下さい。
お断り:今回の内容はあくまで一般論であり、単一の症状の動物が全て軽症であり、様子を見ても大丈夫、という意味ではありません。判断はあくまでご自身で、迷ったら必ず連れて来てください。
最後にお願い。病院へ行くべきかどうかを電話でお聞きになる飼い主さんが多いです。「●●なんですが、大丈夫ですか?」「今●●したんですが、どうすればいいですか?」という感じです。
その答えは申し訳ありませんがいつも同じです。「お話だけでは何とも言えません」。まあたぶんほとんど大丈夫だろうな、と思う症状や相談でも、お電話での相談では基本的には「大丈夫です」とは絶対に言いません(言えません)。
だって、ほんとにわからないんですもん。「どうしよう」と迷ったら病院へ。
posted by hiro at 17:45| Comment(0)
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