さて、ここまで読んでいただいて皆様の頭の中には「?(クエスチョンマーク)」が浮かんでいることでしょう。
え、それだけインターネットを否定しておいて、自分でネットでサプリショップを開くってどゆこと?
そうなんです。そのお気持ち、よくわかります。お前も結局儲け主義かと。
そういう気持ち(ちょっと副業的な?)が全く無いと書けば嘘になります。でも、今後ある程度「獣医さんのサプリ屋さん」が軌道に乗ったとしても、本業はあくまで動物の診療であり、病院で日々皆様と向かい合いながら働くことを疎かにすることはありません。
それに、恐らく、何十万円も何百万円も売上が上がるとは思えません。価格では大手に叶いませんし、検索ではamazonに叶いませんし、先発組からはすでに何周も周回遅れです。
私がサプリのネットショップを開いたのは、あくまで「当院に来てくださっている患者さんたちへのサービスの一貫」というのがメインです。サプリだけ取りに行きたいけど、病院まで行けない。面倒だ。じゃあ、通販で買おう。でも、ここ、ホントに安心なのかな?そういう声に応えたかった、というのが動機の一番大きな部分です。
ネット通販の大きな波は、もう止められません。逆に、「通販すらできない」と確実に時代に取り残され、どんどん遺物化、化石化していくでしょう。
じゃあ、それに真っ向反対するのではなく、その波にちょっとだけ乗ってみようかな、それぐらいの気持ちで始めたと思ってください。
2021年02月03日
動物病院とインターネット、最終話
posted by hiro at 19:08| Comment(0)
| 日記
2021年02月02日
動物病院とインターネット、続きの続き
続きです。
サプリやフード、薬までもがネットで買えてしまう。便利だけど、落とし穴があります。それを認識してくださいね、というお話です。前回は「間違える可能性」と「偽物の可能性」についてお話しました。
今日は残り2つです。
3,質が悪い可能性
これはフード(処方食)で一番問題になることなのですが、例えば当院の場合、病院で取り扱っている処方食は注文を受けてから業者に発注し、製品を持ってきてもらいます。そして皆様に持って帰っていただくので、倉庫や病院内で長期保存しているフードはほとんどありません。もちろん正規ルートなので海外から輸入される時点でもきちんと温度管理されて最短時間で届いているフードです。
しかし、ネットやホームセンターで売られているフードはどうでしょう。どんなルートで、どんな輸送手段で仕入れてきたか、どんな倉庫でどんな管理をして保存されているのかを「正しく」調べる術はほぼありません。店頭に並んでいる商品も、よく売れている商品を除き、何ヶ月も陳列棚に置かれている・・・という可能性もあります。
最悪のパターンは、太平洋やインド洋を船便でコンテナ輸送された場合です。赤道付近をコンテナで輸送された場合、コンテナ内の温度は70度まで上昇すると言われています。そんな環境に何週間もさらされた(可能性のある)フード、ちょっと安いから、便利だからといって使う気になれますか?
実際に、ネットなどで買ったフードを開けたら油の酸化したような変な匂いがした、という話はよく聞きます。そういうフードを与えて体調を崩した動物を診察したことがある、という獣医さんも知っています。
もちろんすべてのネットショップ、すべての店舗販売がそうだとはいいませんが、それを調べるすべがない、そういう可能性があるというだけでも二の足を踏んでしまいませんか?
どうしてもネットで買いたいという場合、まず最小単位の袋を病院とネットで同時期に注文し、そのパッケージや質を比較してみてください。賞味期限や匂い、食いつきにほとんど差がないならそのネットショップは良いショップだと思います。しかしそれでも、ずっとそういういい商品が送られてくるという保証はありません。
動物病院で(定価で)買うということは、そういう安心や保証も同時に買っているということなのです。
4,意思疎通・信頼関係が疎かになる
病院で処方された薬やフードやサプリをネットで購入した人の中には、ちょっと後ろめたい気持ちになる方もいらっしゃいます(最近はネットで買うのが当たり前になり、そうでもなくなりましたが・・・)。
後ろめたい気持ちになるとどうするか。ネットで買っていることを隠したくなるんですね。あるいは嘘をついてしまう。薬を飲んでいるのに飲んでいないと言ったり、「知り合いからもらった」と言ったり・・・
余談ですが、「知り合いから薬をもらった」とかかりつけの獣医さんに言ったとたん、その獣医さんは心のなかで「ああ、そういうタイプの人ね」と思い、あなたのカルテを「一般フォルダ」から「そういう人フォルダ」に移し替えます(注:比喩表現です)。
「そういう人」がどういう人を意味してるのかは・・・はい、ここには書けません。
閑話休題。
つまり、正しい薬を飲んでいるのかいないのか、きちんとフードを与えているのかいないのか、獣医師の認識と実際に飼い主さんがしていることとの乖離が起こり、非常にややこしく厄介な状態になってしまうのです。
そういう状態ではお互いの信頼関係は生まれません。すると、最良の治療ができなくなってしまうかもしれず、結果的にしわ寄せは動物に・・・
「どうしてもネットで買いたい」とおっしゃるのなら、どうか正直に仰ってください。その理由が値段の問題なら安くする工夫をしますし、手間の問題なら来院頻度を減らす工夫をしたりします。
でも、どうしても出来ないこともあります。その点はご理解いただきたいです。ネットは万能ではないですから。
サプリやフード、薬までもがネットで買えてしまう。便利だけど、落とし穴があります。それを認識してくださいね、というお話です。前回は「間違える可能性」と「偽物の可能性」についてお話しました。
今日は残り2つです。
3,質が悪い可能性
これはフード(処方食)で一番問題になることなのですが、例えば当院の場合、病院で取り扱っている処方食は注文を受けてから業者に発注し、製品を持ってきてもらいます。そして皆様に持って帰っていただくので、倉庫や病院内で長期保存しているフードはほとんどありません。もちろん正規ルートなので海外から輸入される時点でもきちんと温度管理されて最短時間で届いているフードです。
しかし、ネットやホームセンターで売られているフードはどうでしょう。どんなルートで、どんな輸送手段で仕入れてきたか、どんな倉庫でどんな管理をして保存されているのかを「正しく」調べる術はほぼありません。店頭に並んでいる商品も、よく売れている商品を除き、何ヶ月も陳列棚に置かれている・・・という可能性もあります。
最悪のパターンは、太平洋やインド洋を船便でコンテナ輸送された場合です。赤道付近をコンテナで輸送された場合、コンテナ内の温度は70度まで上昇すると言われています。そんな環境に何週間もさらされた(可能性のある)フード、ちょっと安いから、便利だからといって使う気になれますか?
実際に、ネットなどで買ったフードを開けたら油の酸化したような変な匂いがした、という話はよく聞きます。そういうフードを与えて体調を崩した動物を診察したことがある、という獣医さんも知っています。
もちろんすべてのネットショップ、すべての店舗販売がそうだとはいいませんが、それを調べるすべがない、そういう可能性があるというだけでも二の足を踏んでしまいませんか?
どうしてもネットで買いたいという場合、まず最小単位の袋を病院とネットで同時期に注文し、そのパッケージや質を比較してみてください。賞味期限や匂い、食いつきにほとんど差がないならそのネットショップは良いショップだと思います。しかしそれでも、ずっとそういういい商品が送られてくるという保証はありません。
動物病院で(定価で)買うということは、そういう安心や保証も同時に買っているということなのです。
4,意思疎通・信頼関係が疎かになる
病院で処方された薬やフードやサプリをネットで購入した人の中には、ちょっと後ろめたい気持ちになる方もいらっしゃいます(最近はネットで買うのが当たり前になり、そうでもなくなりましたが・・・)。
後ろめたい気持ちになるとどうするか。ネットで買っていることを隠したくなるんですね。あるいは嘘をついてしまう。薬を飲んでいるのに飲んでいないと言ったり、「知り合いからもらった」と言ったり・・・
余談ですが、「知り合いから薬をもらった」とかかりつけの獣医さんに言ったとたん、その獣医さんは心のなかで「ああ、そういうタイプの人ね」と思い、あなたのカルテを「一般フォルダ」から「そういう人フォルダ」に移し替えます(注:比喩表現です)。
「そういう人」がどういう人を意味してるのかは・・・はい、ここには書けません。
閑話休題。
つまり、正しい薬を飲んでいるのかいないのか、きちんとフードを与えているのかいないのか、獣医師の認識と実際に飼い主さんがしていることとの乖離が起こり、非常にややこしく厄介な状態になってしまうのです。
そういう状態ではお互いの信頼関係は生まれません。すると、最良の治療ができなくなってしまうかもしれず、結果的にしわ寄せは動物に・・・
「どうしてもネットで買いたい」とおっしゃるのなら、どうか正直に仰ってください。その理由が値段の問題なら安くする工夫をしますし、手間の問題なら来院頻度を減らす工夫をしたりします。
でも、どうしても出来ないこともあります。その点はご理解いただきたいです。ネットは万能ではないですから。
posted by hiro at 00:00| Comment(0)
| 健康
2021年02月01日
動物病院とインターネット、続き
前回の日記では、こういうな話を書きました。
元々、動物病院とインターネットとは相容れないもの、いやむしろ敵のような関係でした。
過去形になっていることには意味があります(後で説明します)。で、その理由として、
・飼い主さんが、ネットのいい加減な情報に惑わされる
・その情報を鵜呑みに、間違った知識で間違った治療を望む
という2点をあげたのですが、今日はその続きを書きます。
・情報だけでなく、サプリやフード(処方食)、さらには薬まで手に入ってしまう
いい加減で間違った情報、あるいは正しい情報であっても自分い都合のいいところだけを読んで曲解してしまうという点については、まだ病院へ来ていただいた時にしっかりお話をして誤解を解くことが可能ですが、ネットでサプリやフード、薬を購入されて使われると我々は困ってしまいます。
儲からないから?いいえ、違います。安全性を担保できないからです。
サプリやフード、そして薬を一般の方がネットで買うときの危険性は4つあります。
1,間違える可能性
フードや薬の名前はよく似ているものがたくさんあります。パッケージもフードなどによってはよく似ていて、名前だけ違うというものも数多くあります。肝臓用と腎臓用、腎臓用と心臓用など、フードの場合は間違ってもすぐに悪影響が出ない場合もありますが、薬の場合は直接命に関わります。
同じ薬でも、1錠あたりの内容量が違うものがたくさんあります。病院で1錠(10mg)飲ませてたから、ネットで買ったのも1錠(20mg)飲ませてたら薬の用量が2倍で深刻な結果に、なんて事も起こりえます。
いや、薬用量(体重1kg当たり薬を何mg与えるか)もネットで調べるから大丈夫?その情報、本当に正しいと判断できますか?それに、その子の状態・年齢・体調・病態によって1日に飲ます量や回数をきちんと調整できますか?
あえて上から目線で書かせてもらいますが、シロウトさんが薬を自己判断で処方するのは無理です。「薬剤師」という国家資格がなぜあるかを考えればその難しさをご理解いただけると思います。(薬を扱えるのは医師、薬剤師、歯科医師、そして獣医師のみです)。
2,偽物の可能性
フードやサプリでは少ないでしょうけど、薬の偽物はたくさん出回っています。特に高い薬でその傾向は顕著です。いちばん有名なのは、男性のEDの治療に使われるシルデナフィル(バイアグラ)、タダリス(シアリス)ですね。病院で処方してもらうと1錠1000円以上しますが、ネットでは数百円で買えます。しかしその多くは偽物だと言われています。
ED治療薬なら効果がなくても命に別状はありませんし、プラシーボ効果で効くかもしれませんが、動物の薬の場合、プラシーボ効果は期待できませんし、何より命に関わります。高い薬を使わざるを得ない時というのは、えてして重篤で深刻な病態のときだからなおさらです。
あなたかあなたの家族が難病にかかったとします。お医者さんで、この飲み薬を使うと治りますが1ヶ月で50万円掛かりますと言われました。その時、ネットで同じ薬を調べたら国産ではない聞いたことのないメーカーが同じ成分の薬を5万円で売っているのを発見しました。
その薬、ネットで取り寄せて使いますか?・・・・私なら使いません。
長くなったので、続きます。
元々、動物病院とインターネットとは相容れないもの、いやむしろ敵のような関係でした。
過去形になっていることには意味があります(後で説明します)。で、その理由として、
・飼い主さんが、ネットのいい加減な情報に惑わされる
・その情報を鵜呑みに、間違った知識で間違った治療を望む
という2点をあげたのですが、今日はその続きを書きます。
・情報だけでなく、サプリやフード(処方食)、さらには薬まで手に入ってしまう
いい加減で間違った情報、あるいは正しい情報であっても自分い都合のいいところだけを読んで曲解してしまうという点については、まだ病院へ来ていただいた時にしっかりお話をして誤解を解くことが可能ですが、ネットでサプリやフード、薬を購入されて使われると我々は困ってしまいます。
儲からないから?いいえ、違います。安全性を担保できないからです。
サプリやフード、そして薬を一般の方がネットで買うときの危険性は4つあります。
1,間違える可能性
フードや薬の名前はよく似ているものがたくさんあります。パッケージもフードなどによってはよく似ていて、名前だけ違うというものも数多くあります。肝臓用と腎臓用、腎臓用と心臓用など、フードの場合は間違ってもすぐに悪影響が出ない場合もありますが、薬の場合は直接命に関わります。
同じ薬でも、1錠あたりの内容量が違うものがたくさんあります。病院で1錠(10mg)飲ませてたから、ネットで買ったのも1錠(20mg)飲ませてたら薬の用量が2倍で深刻な結果に、なんて事も起こりえます。
いや、薬用量(体重1kg当たり薬を何mg与えるか)もネットで調べるから大丈夫?その情報、本当に正しいと判断できますか?それに、その子の状態・年齢・体調・病態によって1日に飲ます量や回数をきちんと調整できますか?
あえて上から目線で書かせてもらいますが、シロウトさんが薬を自己判断で処方するのは無理です。「薬剤師」という国家資格がなぜあるかを考えればその難しさをご理解いただけると思います。(薬を扱えるのは医師、薬剤師、歯科医師、そして獣医師のみです)。
2,偽物の可能性
フードやサプリでは少ないでしょうけど、薬の偽物はたくさん出回っています。特に高い薬でその傾向は顕著です。いちばん有名なのは、男性のEDの治療に使われるシルデナフィル(バイアグラ)、タダリス(シアリス)ですね。病院で処方してもらうと1錠1000円以上しますが、ネットでは数百円で買えます。しかしその多くは偽物だと言われています。
ED治療薬なら効果がなくても命に別状はありませんし、プラシーボ効果で効くかもしれませんが、動物の薬の場合、プラシーボ効果は期待できませんし、何より命に関わります。高い薬を使わざるを得ない時というのは、えてして重篤で深刻な病態のときだからなおさらです。
あなたかあなたの家族が難病にかかったとします。お医者さんで、この飲み薬を使うと治りますが1ヶ月で50万円掛かりますと言われました。その時、ネットで同じ薬を調べたら国産ではない聞いたことのないメーカーが同じ成分の薬を5万円で売っているのを発見しました。
その薬、ネットで取り寄せて使いますか?・・・・私なら使いません。
長くなったので、続きます。
posted by hiro at 18:05| Comment(0)
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