続きです。
サプリやフード、薬までもがネットで買えてしまう。便利だけど、落とし穴があります。それを認識してくださいね、というお話です。前回は「間違える可能性」と「偽物の可能性」についてお話しました。
今日は残り2つです。
3,質が悪い可能性
これはフード(処方食)で一番問題になることなのですが、例えば当院の場合、病院で取り扱っている処方食は注文を受けてから業者に発注し、製品を持ってきてもらいます。そして皆様に持って帰っていただくので、倉庫や病院内で長期保存しているフードはほとんどありません。もちろん正規ルートなので海外から輸入される時点でもきちんと温度管理されて最短時間で届いているフードです。
しかし、ネットやホームセンターで売られているフードはどうでしょう。どんなルートで、どんな輸送手段で仕入れてきたか、どんな倉庫でどんな管理をして保存されているのかを「正しく」調べる術はほぼありません。店頭に並んでいる商品も、よく売れている商品を除き、何ヶ月も陳列棚に置かれている・・・という可能性もあります。
最悪のパターンは、太平洋やインド洋を船便でコンテナ輸送された場合です。赤道付近をコンテナで輸送された場合、コンテナ内の温度は70度まで上昇すると言われています。そんな環境に何週間もさらされた(可能性のある)フード、ちょっと安いから、便利だからといって使う気になれますか?
実際に、ネットなどで買ったフードを開けたら油の酸化したような変な匂いがした、という話はよく聞きます。そういうフードを与えて体調を崩した動物を診察したことがある、という獣医さんも知っています。
もちろんすべてのネットショップ、すべての店舗販売がそうだとはいいませんが、それを調べるすべがない、そういう可能性があるというだけでも二の足を踏んでしまいませんか?
どうしてもネットで買いたいという場合、まず最小単位の袋を病院とネットで同時期に注文し、そのパッケージや質を比較してみてください。賞味期限や匂い、食いつきにほとんど差がないならそのネットショップは良いショップだと思います。しかしそれでも、ずっとそういういい商品が送られてくるという保証はありません。
動物病院で(定価で)買うということは、そういう安心や保証も同時に買っているということなのです。
4,意思疎通・信頼関係が疎かになる
病院で処方された薬やフードやサプリをネットで購入した人の中には、ちょっと後ろめたい気持ちになる方もいらっしゃいます(最近はネットで買うのが当たり前になり、そうでもなくなりましたが・・・)。
後ろめたい気持ちになるとどうするか。ネットで買っていることを隠したくなるんですね。あるいは嘘をついてしまう。薬を飲んでいるのに飲んでいないと言ったり、「知り合いからもらった」と言ったり・・・
余談ですが、「知り合いから薬をもらった」とかかりつけの獣医さんに言ったとたん、その獣医さんは心のなかで「ああ、そういうタイプの人ね」と思い、あなたのカルテを「一般フォルダ」から「そういう人フォルダ」に移し替えます(注:比喩表現です)。
「そういう人」がどういう人を意味してるのかは・・・はい、ここには書けません。
閑話休題。
つまり、正しい薬を飲んでいるのかいないのか、きちんとフードを与えているのかいないのか、獣医師の認識と実際に飼い主さんがしていることとの乖離が起こり、非常にややこしく厄介な状態になってしまうのです。
そういう状態ではお互いの信頼関係は生まれません。すると、最良の治療ができなくなってしまうかもしれず、結果的にしわ寄せは動物に・・・
「どうしてもネットで買いたい」とおっしゃるのなら、どうか正直に仰ってください。その理由が値段の問題なら安くする工夫をしますし、手間の問題なら来院頻度を減らす工夫をしたりします。
でも、どうしても出来ないこともあります。その点はご理解いただきたいです。ネットは万能ではないですから。
2021年02月02日
動物病院とインターネット、続きの続き
posted by hiro at 00:00| Comment(0)
| 健康
この記事へのコメント
コメントを書く