さて、ここまで読んでいただいて皆様の頭の中には「?(クエスチョンマーク)」が浮かんでいることでしょう。
え、それだけインターネットを否定しておいて、自分でネットでサプリショップを開くってどゆこと?
そうなんです。そのお気持ち、よくわかります。お前も結局儲け主義かと。
そういう気持ち(ちょっと副業的な?)が全く無いと書けば嘘になります。でも、今後ある程度「獣医さんのサプリ屋さん」が軌道に乗ったとしても、本業はあくまで動物の診療であり、病院で日々皆様と向かい合いながら働くことを疎かにすることはありません。
それに、恐らく、何十万円も何百万円も売上が上がるとは思えません。価格では大手に叶いませんし、検索ではamazonに叶いませんし、先発組からはすでに何周も周回遅れです。
私がサプリのネットショップを開いたのは、あくまで「当院に来てくださっている患者さんたちへのサービスの一貫」というのがメインです。サプリだけ取りに行きたいけど、病院まで行けない。面倒だ。じゃあ、通販で買おう。でも、ここ、ホントに安心なのかな?そういう声に応えたかった、というのが動機の一番大きな部分です。
ネット通販の大きな波は、もう止められません。逆に、「通販すらできない」と確実に時代に取り残され、どんどん遺物化、化石化していくでしょう。
じゃあ、それに真っ向反対するのではなく、その波にちょっとだけ乗ってみようかな、それぐらいの気持ちで始めたと思ってください。
2021年02月03日
動物病院とインターネット、最終話
posted by hiro at 19:08| Comment(0)
| 日記
2021年01月26日
動物病院とインターネット、あるいは診療費の話(1)の続き
さて、前々回の続きです。
TNR手術と同時期に始めた新しいこと、それは、サプリショップ開設です。
(ホームページやフェイスブックでアナウンスしているのですでにご存じの方も多いと思いますが)
元々、動物病院とインターネットとは相容れないもの、いやむしろ敵のような関係でした。
この件についてちょっと脱線します。そう、ここから、5年前の「診療費の話1」の続きになります。やっと続きが書ける。
我々がインターネットを敵視(とまでは行かなくても、厄介だなと思っている)理由を書いていきます。
・飼い主さんが、ネットのいい加減な情報に惑わされる
いやもういっぱいいらっしゃるんですよ。「この薬は体に悪いとあるブログに書いてました」「ステロイドは副作用が酷いので使っちゃダメとある先生が言ってました」「ネットで調べたら◯◯という病気だと思うのですが」っていう人。
いや、心配で色々調べたくなる気持ちはわかるんですけど、鵜呑みにしないでほしいです。それ、「単なる個人の感想」か「頭のおかしい人」かコマーシャル(商売)ですから。
・その情報を鵜呑みに、間違った知識で間違った治療を望む
実際に開業して何十年もやってる獣医師ではなく、ネットの、どこの誰が書いたかわからない事、素人が書いてるブログを信じる心理はわからなくもないです。飼い主さんの「こうあってほしい」という心理につけ込むため(今流行の「正常性バイアス」ってやつですね)、良いことや極端なことを書いてるからです。しかも断定的で説得力がある。
なぜ断定的で説得力がある言い方ができるかというと、責任を取らなくていいからです。そう、これ、詐欺師の常套手段なんですよねー。アトピーやガンの代替医療なんか典型ですね。
「波動」とか「宇宙」とか「漢方」とか(漢方が全部胡散臭いわけではありません、念のため)「独自の」とか「なんとか水」とか書いてたら、ちょっと慎重になってください。そんなモノありませんから。ホントに良いものなら大手が商売にしてますって!!私も使いますって!!
昔から言うでしょ?楽して儲かる話なんて無いんです。安く簡単に病気が治ることもないんです。詐欺なんです!
こういうサイトは自分のところの商品を売りたいので、既存の薬や西洋医学をけなすところから始めます。そのパターンはすべて同じ。既存の獣医師は金儲け主義!西洋医学の薬は副作用が怖い!本当は薬は毒だから飲まさないほうが良い!
タチが悪い所は、証拠として論文を紹介します。だってほら、論文に書いてあるでしょ。だから私は正しいんですよと。
そりゃあ一般の人は騙されますよね。「へー、論文になってるのかそりゃあ間違いないだろうなあ。この先生、論文まで見つけてきてしかも教えてくれて親切だなあ。ちゃんと勉強してるんだなあ。よし、信じよう」
それこそ詐欺師の思うつぼですからー!!
理由そのいち。
一口に論文と言っても、例えば科学雑誌の最高峰、世界中で読まれている「ネイチャー」や「サイエンス」に載った論文と、日本の小さな分野の、これまた小さな学会の、発行部数数千部しかない雑誌に乗った論文とを同列に語れないことはわかりますよね。
権威という言葉はあまり使いたくないけれど、その説得力と内容の信憑性は別物です。つまり、論文にもピンからキリまであるということです。でも詐欺師はその「キリ」の論文をさも「ピン」のように紹介しているんです。
理由そのに。
論文には消費期限があります。科学の世界では「昨日の常識が今日の非常識」みたいなことが頻繁に起こります。はるか昔なんて放射性物質は病気を治す万能薬って思われてラジウムを飲んでたりしたんですよ。ガンで死ぬ人が多数出て、やっと危険性が認知されたとか。
まあこれは極端な例としても、ダイオキシンの危険性、マイナスイオンの有効性、真夏の運動時に水分塩分補給するかしないか、コーヒーやアルコールが体へ及ぼす影響(適量なら良いのか、それとも少しでもダメなのか)なんて、昔から大幅に変わってきていることはたくさんあります。
つまり何がいいたいかというと、論文を読む時は「いつ発表されたものか」ということがけっこう大事で、何十年も前に発表された論文を根拠として出してるっていう時点で疑わないといけないということです。
ちなみに論文の発表された年は著者の後、一番最後に書かれているはずです(論文引用のルール)。
理由そのさん。
科学論文は「一科学者(あるいは一研究所、一大学)の意見」であって、絶対に正しいとは限らない。だって科学者によって意見が分かれることなんて山ほどあるわけですから。科学なんてまだまだわからないことのほうが多いんですよ。だから極端に言えば論文は「署名のあるブログ」っていうだけのものなんです。
理由そのよん。
都合のいいことだけ抜き出してないか。これ、たいへん多いです。論文紹介してても、それを隅から隅まで読む読者の人ってまあいないですよね。英語ならなおさら(科学論文は基本英語です)。だから、詐欺師は「その論文の、自分の都合のいいごく一部」だけ抜き出して、「ほら論文に書いてるでしょ!」って言うんです。
でも、きちんと読んでみるとその「都合のいいごく一部」は全く本筋とは関係なかったりするんですよね。酷いものなんかでは「試しにこういう特殊な条件でやってみたら、悪い結果がでました。でも一般的にはすごくいい結果が出ましたよ」という実験結果の前半だけを取り出して「ほら悪い薬ですよ!論文に悪いって書いてますよ!」って言ったりしてます。
これ、実際に、ある薬を否定してる獣医さんのウェブでやってることなんですよね。酷い話しです。
というわけで、「インターネットを鵜呑みにしてはいけない理由」の途中ですが、ちょっと長くなってしまったので今日はここまでにしときます。
TNR手術と同時期に始めた新しいこと、それは、サプリショップ開設です。
(ホームページやフェイスブックでアナウンスしているのですでにご存じの方も多いと思いますが)
元々、動物病院とインターネットとは相容れないもの、いやむしろ敵のような関係でした。
この件についてちょっと脱線します。そう、ここから、5年前の「診療費の話1」の続きになります。やっと続きが書ける。
我々がインターネットを敵視(とまでは行かなくても、厄介だなと思っている)理由を書いていきます。
・飼い主さんが、ネットのいい加減な情報に惑わされる
いやもういっぱいいらっしゃるんですよ。「この薬は体に悪いとあるブログに書いてました」「ステロイドは副作用が酷いので使っちゃダメとある先生が言ってました」「ネットで調べたら◯◯という病気だと思うのですが」っていう人。
いや、心配で色々調べたくなる気持ちはわかるんですけど、鵜呑みにしないでほしいです。それ、「単なる個人の感想」か「頭のおかしい人」かコマーシャル(商売)ですから。
・その情報を鵜呑みに、間違った知識で間違った治療を望む
実際に開業して何十年もやってる獣医師ではなく、ネットの、どこの誰が書いたかわからない事、素人が書いてるブログを信じる心理はわからなくもないです。飼い主さんの「こうあってほしい」という心理につけ込むため(今流行の「正常性バイアス」ってやつですね)、良いことや極端なことを書いてるからです。しかも断定的で説得力がある。
なぜ断定的で説得力がある言い方ができるかというと、責任を取らなくていいからです。そう、これ、詐欺師の常套手段なんですよねー。アトピーやガンの代替医療なんか典型ですね。
「波動」とか「宇宙」とか「漢方」とか(漢方が全部胡散臭いわけではありません、念のため)「独自の」とか「なんとか水」とか書いてたら、ちょっと慎重になってください。そんなモノありませんから。ホントに良いものなら大手が商売にしてますって!!私も使いますって!!
昔から言うでしょ?楽して儲かる話なんて無いんです。安く簡単に病気が治ることもないんです。詐欺なんです!
こういうサイトは自分のところの商品を売りたいので、既存の薬や西洋医学をけなすところから始めます。そのパターンはすべて同じ。既存の獣医師は金儲け主義!西洋医学の薬は副作用が怖い!本当は薬は毒だから飲まさないほうが良い!
タチが悪い所は、証拠として論文を紹介します。だってほら、論文に書いてあるでしょ。だから私は正しいんですよと。
そりゃあ一般の人は騙されますよね。「へー、論文になってるのかそりゃあ間違いないだろうなあ。この先生、論文まで見つけてきてしかも教えてくれて親切だなあ。ちゃんと勉強してるんだなあ。よし、信じよう」
それこそ詐欺師の思うつぼですからー!!
理由そのいち。
一口に論文と言っても、例えば科学雑誌の最高峰、世界中で読まれている「ネイチャー」や「サイエンス」に載った論文と、日本の小さな分野の、これまた小さな学会の、発行部数数千部しかない雑誌に乗った論文とを同列に語れないことはわかりますよね。
権威という言葉はあまり使いたくないけれど、その説得力と内容の信憑性は別物です。つまり、論文にもピンからキリまであるということです。でも詐欺師はその「キリ」の論文をさも「ピン」のように紹介しているんです。
理由そのに。
論文には消費期限があります。科学の世界では「昨日の常識が今日の非常識」みたいなことが頻繁に起こります。はるか昔なんて放射性物質は病気を治す万能薬って思われてラジウムを飲んでたりしたんですよ。ガンで死ぬ人が多数出て、やっと危険性が認知されたとか。
まあこれは極端な例としても、ダイオキシンの危険性、マイナスイオンの有効性、真夏の運動時に水分塩分補給するかしないか、コーヒーやアルコールが体へ及ぼす影響(適量なら良いのか、それとも少しでもダメなのか)なんて、昔から大幅に変わってきていることはたくさんあります。
つまり何がいいたいかというと、論文を読む時は「いつ発表されたものか」ということがけっこう大事で、何十年も前に発表された論文を根拠として出してるっていう時点で疑わないといけないということです。
ちなみに論文の発表された年は著者の後、一番最後に書かれているはずです(論文引用のルール)。
理由そのさん。
科学論文は「一科学者(あるいは一研究所、一大学)の意見」であって、絶対に正しいとは限らない。だって科学者によって意見が分かれることなんて山ほどあるわけですから。科学なんてまだまだわからないことのほうが多いんですよ。だから極端に言えば論文は「署名のあるブログ」っていうだけのものなんです。
理由そのよん。
都合のいいことだけ抜き出してないか。これ、たいへん多いです。論文紹介してても、それを隅から隅まで読む読者の人ってまあいないですよね。英語ならなおさら(科学論文は基本英語です)。だから、詐欺師は「その論文の、自分の都合のいいごく一部」だけ抜き出して、「ほら論文に書いてるでしょ!」って言うんです。
でも、きちんと読んでみるとその「都合のいいごく一部」は全く本筋とは関係なかったりするんですよね。酷いものなんかでは「試しにこういう特殊な条件でやってみたら、悪い結果がでました。でも一般的にはすごくいい結果が出ましたよ」という実験結果の前半だけを取り出して「ほら悪い薬ですよ!論文に悪いって書いてますよ!」って言ったりしてます。
これ、実際に、ある薬を否定してる獣医さんのウェブでやってることなんですよね。酷い話しです。
というわけで、「インターネットを鵜呑みにしてはいけない理由」の途中ですが、ちょっと長くなってしまったので今日はここまでにしときます。
posted by hiro at 11:40| Comment(0)
| 日記
2013年12月24日
動物をめぐる似非科学(最終回)
お待たせしました。動物をめぐる似非科学、今回はズバリ核心に切り込みます。
エピソードその1:万能シール
昔、まだ勤務医をしていた頃、腎臓が悪いシェルティを診察しました。その子は、残念ながら病気が見つかった時にはすでに末期的な段階で、高齢ということもあり治療をしても数ヶ月持つかどうか・・・という状況でした。
しかし、適切な治療をすれば尿毒症からくる吐き気や食欲不振、そしてだるさなどの症状は一時的にでもやわらげることができます。
血液検査の結果と病名をお伝えし、治療方針について話をしようとしたところ、飼い主さんが
「先生大丈夫。この子にはこれを使いますから(治療は)いりまへん」
と言って、かばんの中から丸いシールを取り出しました。その、ロゴの入った肌色の小さなシールは何でもチタンが練り込んであるらしく「生体電気」を整えて病気を直してくれるとのこと。
若かった私は、そんなものが世の中に存在することも知らず、そしてそのあまりに堂々とした物言いに圧倒され、結果的に飼い主さんの言い分を飲むことになりました。後で院長に相談すると「ああ、そういう人はしたいようにさせてあげたほうがいいよ」とのこと。
なぜならそういうものを信じる人は「医学的常識」など聞く耳持たず、強引に治療をしてもトラブルになるだけだからだそうです。
結局その子は最初の見立てよりも早く(しかも苦しみながら・・・)亡くなりましたが、飼い主さんは満足げでした。
エピソードその2:ステロイド嫌悪症
開業当初のことです。ただし、このエピソードは私の治療方法や説明も悪かったかもしれませんので、一緒に反省します。
その犬はその当時増えつつあった「アトピー性皮膚炎」だったのですが、治療の三大柱、スキンケア(その子にあったシャンプー、サプリメント)と環境整備(まめな掃除)はご理解いただいたのですが、かゆみを抑えるステロイドだけは頑として受け付けてくれません。
その飼い主さんは「ステロイドは悪魔の薬で、一度使ったら最後、一生飲ませ続けないといけなくなり、少しでも止めたり量を減らしたりするとたちまちそれまでの何倍もの痒みが襲ってきて病気が悪化し、最後には全身がボロボロになって死ぬ」と信じて疑わなかったのです。
もちろんステロイドにはそういう側面がありますが(そして確かに最近ではできるだけステロイドを使わないような治療へシフトしてきつつありますが)、とにかく今出ている酷い痒みを止めるにはステロイドを使うしかない、という私の説得も馬耳東風、ケース1の方と同様、病院での治療を拒否しご自分で治療する方法を模索するようになりました。
西にステロイドを使わない獣医さんがいると聞けば出かけ、東に漢方で直してくれる先生がいれば車を走らせ、やれソリッド・ゴールドだ高価なサプリメントだ牛乳石鹸だ木酢液だ竹酢液だムトウハップだと色々なものを使っているうちにその子の皮膚はどんどん悪化し、ついには真っ黒のボロボロのガサガサのベトベトに。
え、どうして治療を受けていないはずなのにそれだけ詳しく知ってるんだ?それは、治療は受けないけれど電話で「これはどうだ」「あれは効くか」「こんなのを見つけたんだけど」と聞いてこられるからです。その都度「よくわかりませんし、そもそも診療もしないでこのサプリがいいとかあのフードがいいなどという無責任なことは言えない」と言うと数ヶ月に1度連れてこられる。そして最初に戻る、の繰り返し。
(ソリッド・ゴールドと実名を上げましたが、今はどうか知りませんがその当時のソリッドゴールドは食べさせるだけで「フィラリアにならない」「アトピー性皮膚炎が直る」「ジステンパーにも掛からなくなる」などと謳っていたのであえて実名を挙げました。このように「何にでも効く」と謳うのは似非科学の特徴の1つです)
結局その子も、何年も酷い痒みに夜も寝られない状態のまま亡くなっていきました。最後までステロイドは使わなかったと思います(他で処方してもらっていたかもしれませんが)。
そう、結局、エセ科学に騙されてつらい目に合うのは他のだれでもない、動物たちなんですよね。
ご自分で信じていろいろな健康法を試されるのは構いません。でも、それを動物に押し付けないでください。あなたには効いているかもしれませんが、それがその子に効くとはかぎりません。それどころか、人間は大丈夫でも犬や猫には毒になるモノや食べ物もたくさんあるのです。
あなたが信じているその◯◯、ひょっとしたら「iPhoneは電子レンジで充電できる」ぐらいの与太話かもしれません。iPhoneは壊れても買い換えれば済みますが、一度損なった健康はお金では買い戻せないかもしれません。
エピソードその1:万能シール
昔、まだ勤務医をしていた頃、腎臓が悪いシェルティを診察しました。その子は、残念ながら病気が見つかった時にはすでに末期的な段階で、高齢ということもあり治療をしても数ヶ月持つかどうか・・・という状況でした。
しかし、適切な治療をすれば尿毒症からくる吐き気や食欲不振、そしてだるさなどの症状は一時的にでもやわらげることができます。
血液検査の結果と病名をお伝えし、治療方針について話をしようとしたところ、飼い主さんが
「先生大丈夫。この子にはこれを使いますから(治療は)いりまへん」
と言って、かばんの中から丸いシールを取り出しました。その、ロゴの入った肌色の小さなシールは何でもチタンが練り込んであるらしく「生体電気」を整えて病気を直してくれるとのこと。
若かった私は、そんなものが世の中に存在することも知らず、そしてそのあまりに堂々とした物言いに圧倒され、結果的に飼い主さんの言い分を飲むことになりました。後で院長に相談すると「ああ、そういう人はしたいようにさせてあげたほうがいいよ」とのこと。
なぜならそういうものを信じる人は「医学的常識」など聞く耳持たず、強引に治療をしてもトラブルになるだけだからだそうです。
結局その子は最初の見立てよりも早く(しかも苦しみながら・・・)亡くなりましたが、飼い主さんは満足げでした。
エピソードその2:ステロイド嫌悪症
開業当初のことです。ただし、このエピソードは私の治療方法や説明も悪かったかもしれませんので、一緒に反省します。
その犬はその当時増えつつあった「アトピー性皮膚炎」だったのですが、治療の三大柱、スキンケア(その子にあったシャンプー、サプリメント)と環境整備(まめな掃除)はご理解いただいたのですが、かゆみを抑えるステロイドだけは頑として受け付けてくれません。
その飼い主さんは「ステロイドは悪魔の薬で、一度使ったら最後、一生飲ませ続けないといけなくなり、少しでも止めたり量を減らしたりするとたちまちそれまでの何倍もの痒みが襲ってきて病気が悪化し、最後には全身がボロボロになって死ぬ」と信じて疑わなかったのです。
もちろんステロイドにはそういう側面がありますが(そして確かに最近ではできるだけステロイドを使わないような治療へシフトしてきつつありますが)、とにかく今出ている酷い痒みを止めるにはステロイドを使うしかない、という私の説得も馬耳東風、ケース1の方と同様、病院での治療を拒否しご自分で治療する方法を模索するようになりました。
西にステロイドを使わない獣医さんがいると聞けば出かけ、東に漢方で直してくれる先生がいれば車を走らせ、やれソリッド・ゴールドだ高価なサプリメントだ牛乳石鹸だ木酢液だ竹酢液だムトウハップだと色々なものを使っているうちにその子の皮膚はどんどん悪化し、ついには真っ黒のボロボロのガサガサのベトベトに。
え、どうして治療を受けていないはずなのにそれだけ詳しく知ってるんだ?それは、治療は受けないけれど電話で「これはどうだ」「あれは効くか」「こんなのを見つけたんだけど」と聞いてこられるからです。その都度「よくわかりませんし、そもそも診療もしないでこのサプリがいいとかあのフードがいいなどという無責任なことは言えない」と言うと数ヶ月に1度連れてこられる。そして最初に戻る、の繰り返し。
(ソリッド・ゴールドと実名を上げましたが、今はどうか知りませんがその当時のソリッドゴールドは食べさせるだけで「フィラリアにならない」「アトピー性皮膚炎が直る」「ジステンパーにも掛からなくなる」などと謳っていたのであえて実名を挙げました。このように「何にでも効く」と謳うのは似非科学の特徴の1つです)
結局その子も、何年も酷い痒みに夜も寝られない状態のまま亡くなっていきました。最後までステロイドは使わなかったと思います(他で処方してもらっていたかもしれませんが)。
そう、結局、エセ科学に騙されてつらい目に合うのは他のだれでもない、動物たちなんですよね。
ご自分で信じていろいろな健康法を試されるのは構いません。でも、それを動物に押し付けないでください。あなたには効いているかもしれませんが、それがその子に効くとはかぎりません。それどころか、人間は大丈夫でも犬や猫には毒になるモノや食べ物もたくさんあるのです。
あなたが信じているその◯◯、ひょっとしたら「iPhoneは電子レンジで充電できる」ぐらいの与太話かもしれません。iPhoneは壊れても買い換えれば済みますが、一度損なった健康はお金では買い戻せないかもしれません。
posted by hiro at 20:33| Comment(0)
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